原子分解能電子顕微鏡JEM-ARM300F "GRAND ARM™" を さらに進化させ、低加速から高加速までさまざまな加速電圧にて、超高空間分解能観察と高感度分析を両立させました。
新開発対物レンズFHP2
加速電圧300 kV対応の超高空間分解能観察用対物レンズポールピースFHPの性能はそのまま維持しつつ、大面積(158 mm2)SDDのX線取り出し角、検出立体角が向上するようにポールピースの形状を最適化しました。
その結果、超高空間分解能の性能を持ちながら、FHPの2倍以上の実効X線検出感度が実現しました。
エンクロージャーカバー
GARM ARM™2では、TEMの鏡筒をボックス型のエンクロージャー (標準構成) でカバーしました。これにより、気流や室温変化、騒音などの外乱の影響を低減し、装置の安定性が向上しました。
JEOL COSMO™では、アモルファス領域から、2枚のロンチグラムを取得して、収差を計測・補正します。したがって、専用の試料なしで、Quick & Accurate収差補正を行うことが可能です。
安定性の向上
新型冷陰極電界放出形電子銃 (CFEG) では、排気量を強化した小型ポンプを採用しました。
これにより、電子銃エミッター近傍の真空度が向上し、エミッションおよびプローブ電流の安定性が向上いたしました。さらに、ポンプが小型されたことにより、CFEGの重量もおよそ100 kg軽減したことで、TEM本体の振動に対する抵抗力が強化されました。
また、他にも電気的、機械的な安定性を強化することにより、装置全体の安定性、性能の向上を達成いたしました。
OBF システム (オプション)
OBF STEM(Optimum Bright Field STEM)は、分割STEM検出器で得られた各セグメント像を位相像再生の元データとして使用し、専用のフーリエフィルターを用いて画像のS/N比を最大化する新しいイメージング手法です。重元素と軽元素の両方に対し、極めて低い電子線量で高いコントラストを実現します。
標準的な環状暗視野・環状明視野STEM法では観察が困難な電子線に弱い物質に対しても、高いコントラストを維持しつつ、且つ幅広い倍率で簡単に解析することができます。
ゼオライトや金属有機構造体 (MOF) などの電子線に弱い材料では、照射電子線量を抑えつつ、軽元素を高いコントラストで観察する必要があります (通常、プローブ電流は1.0 pA未満)。
OBF STEMは、このような低電子線量での実験に非常に有効であり、低ドーズ条件かつ原子分解能レベルでのSTEM観察を実現します。
MOF MIL-101 (左) およびMFIゼオライト (右) のOBF STEM像は、いずれもシングルショットで取得され、FFTパターン上で1Åという高い空間分解能が確認できています(右挿入図)。さらにスタック画像平均 (左挿入図) により、分解能とコントラストが非常に高いレベルで両立されていることが確認できます。
OBF STEM法は、軽元素観察にも非常に適した手法です。低加速電圧での観察においても、高いコントラストと空間分解能を両立させることができます。
OBFの高いドーズ効率と合わせ、試料へのダメージを大きく軽減することが可能です。
電子線に弱い試料に対しては、視野探しから像取得までの全ての操作を低ドーズ条件下で行う必要があります。
このような場合、OBF STEMのライブイメージングは必須の機能となります。
OBFライブイメージング機能は、OBFシステムに標準で含まれていて、シンプルなGUI制御で、通常のSTEM像観察に近いシームレスな表示更新が可能です。